[大宇宙のしくみが解かってきた!「応用編」] 第63号
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はじまり物語
4.日本人による進化論
進化論には多くの日本人が関わり重要な貢献がなされています。日本人が提唱した主な進化論だけでも次のようなものがあります。
(1)今西進化論
今西錦司(1902~1992)は、ダーウィン進化論の進化の単位は「個体」と考えているのに対して、「種」が進化の単位であるととらえて、「種」は変わるべきときがきたら変わるというマクロ的な考え方を唱えています。
(2)木村資生の中立進化論
木村資生(1924~1994)は、突然変異の大部分は生物にとって有利でも不利でもない中立的な変異であり、生物にとって有利な変異は無視できるほど少ないと考えました。したがって生物の進化も、その多くは適者生存による自然淘汰で起きるのではなく、むしろ中立的な変異の中で、たまたま幸運な変異が偶然拡がって定着することによって進化が生まれると主張しています。この説は現在のところ多くの科学者の支持を得ているようです。
(3)ウイルス進化説
中原英臣と佐川峻は1971年、「ウイルス進化説」を提唱しました。ほとんどの進化論では遺伝子の変化は突然変異によって起こると考えています。これに対して、ウイルスが遺伝子を変化させることによって進化が起きるというのが「ウイルス進化説」です。
ダーウィンの進化論以降、遺伝子は親から子にしか伝わらないと考えられてきましたが、ウイルス進化説では、個体から個体へ水平的にも移動し得ると考えます。ウイルスの感染は親子に限らないからです。さらに同じ種同士に限定する必要もなく、例えば、鳥からブタへ、ブタから人へなど異なる種の間でも遺伝子が運ばれます。ウイルスは遺伝子の運び屋でもあると考えているのです。ただし、ウイルス進化説にも様々な批判、反論があります。
(4)不均衡進化論
古澤満によって1988年に提唱された「不均衡進化論」は生物の多様性の謎を説明できる重要な理論です。突然変異の変異率は一定ではなく、状況によって変化すると考え、その仕組みをDNAの複製メカニズムの不均衡にあるとするのが古澤満の「不均衡進化論」です。
◎生物が環境に適合している間は低い変異率で推移して敢えて大きな変化はしない。
◎環境が激変した場合は高い変異率で推移して、様々な変種を増やして適合可能性を高める。
[B-2] 進化論の論点
以上のように様々な進化論がありますが、どの進化論も問題点を内在しており総括的かつ完全な進化論はまだありません。そして進化論を論ずる上で、大きな論点があります。
(1)進化は偶然の結果か? それとも必然か?
ダーウィンの進化論では、偶然の突然変異によって発生した変種が、生存競争と自然淘汰によって選択され遺伝すると考えています。(適者生存)
一方、偶然ではなく、ある目的に沿って進化すると考える進化論もあります。ラマルクの「用不用説」もその一つです。他にセオドア・アイマー(1843~1898:ドイツ)の「定向進化説」、今西錦司の「今西進化論」なども同様です。
(2)進化の単位は個体か? それとも種か?
ダーウィンの進化論では、突然変異によって個体が変化し、それが徐々に種の中に拡がっていくと考えます。そしてその拡がりのメカニズムの説明に苦労しています。一方、今西進化論では、個体ではなく種が変化すると考えています。
(3)協調と共生
ダーウィンの進化論では、生存競争すなわち適者が非適者を打ち負かし、競争を勝ち抜いたものが生命を次世代に引き継ぐとしています。しかし実際には、種の中の競争や、種と種の間の生存競争の例は多くはないようです。むしろお互いに協調し、助け合いをし、共に住み分けをして共生、共存している例の方が多くみられます。種の中の協調ならまだしも、異なる種間でも協調・共生が多数行われています。しかしそのメカニズムは解かっていません。
(4)進化の速度が時代によって異なるのは何故か?
ダーウィンの「突然変異」は、無作為かつランダムに変異が起きるというのですから、時代によって変わらず、いつも同じ程度のDNAの変異率の筈です。しかしカンブリア大爆発のように、ある時期に極めて高い変異が発生したのは何故なのか説明できません。既に述べたように古澤満の「不均衡進化論」は、DNAの複製メカニズムの不均衡を提起してこれを見事に説明しています。しかし変異率を制御する具体的な仕組みは解かっていません。
[B-3] 私の進化論 <私見>
1.私は、生物の進化は物質レベルの単純で機械的な法則だけで進化してきたのではないと考えています。ダーウィンやその他の進化論もそれぞれ一面を捉えていますが、実際には様々な要因が絡み合って複雑に進化してきたと考えます。すなわち、進化の要因は一つではなく複数あると考えています。
2.しかし、基本的には、偶然の突然変異だけではなく、ある目的に沿って進化を模索してきたと考えています。その目的のひとつは、その種が何としても「生き延びる」ことです。生き延び、子孫にいのちをリレーするために、その環境下で生物にできる最大限の努力をし、変化を模索します。努力が実った場合、その生物はより良き方向へ変化し、進化して生き延びていきます。
3.生物は、DNAや細胞など物質だけで構成されるのではなく、眼には見えない生命エネルギーと生命情報を伴っていると考えます。そう考えないとこれまで述べてきた膨大な不思議がほとんど解消されないのです。DNAや遺伝子は、極めて単純化され要約された物質レベルの遺伝情報ですが、その背後に見えない「生命情報」がリンクしていると考えます。
そしてこの生命情報が、日常の細胞分裂や成長を実質的に制御し、また環境や個別状況の変化に適宜対応するための拠り所になると考えます。
4.環境の激変が起きた時は、生命エネルギーと生命情報が総動員されて、あらゆる観点から変化・進化を模索すると考えます。環境の変化が進化の重要な原動力であり、環境変化が大きければ大きいほど進化が加速されると考えています。
遺伝子の変化は、偶然の突然変異だけで起きるのではない実例があります。飢餓状態に置かれた細胞が頻繁に遺伝子を改変する事例が実際に見つかっています。環境によって遺伝子の変化が促進されるのです。これは古澤満の「不均衡進化論」を裏付けています。
富士健康クラブ
関口 素男
sekiguchi.m@ozzio.jp
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