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富士健康クラブ

[宇宙の不思議・いのちの不思議]


[宇宙の不思議・いのちの不思議]  第14号

第2章 ミクロの世界の不思議


[2-3] 素粒子の影武者

ディラック(英国)は20世紀前半に陽電子の存在を予言しました。通常の電子はマイナスの電気を帯びていますが、プラスの電気を帯びた陽電子が存在し得ると考えました。そして1932年、宇宙線の観測によって実際に陽電子が発見されました。

理論物理学では、様々な「対称性」を重視します。マイナスの電気を帯びた電子だけが宇宙に存在するのは不自然で偏っていると考えます。プラスの電子があった方が自然だと考えます。「対称性」に関しては、電気のプラス、マイナスだけでなく、スピン(自転量)の対称性など様々な対称性が重視されています。


1.反粒子

(1)一般的に粒子と反対の電気を持つ粒子を「反粒子」と呼びます。したがってプラスの電気を帯びた陽電子は、マイナスの電気を帯びた普通の電子の反粒子です。クォークにも電気が逆の反クォークがあります。そして、反クォークや陽電子から作られる反原子も存在し得ます。理論的には、反原子から反物質を作ることも可能です。SFに時々登場するようですね。

(2)様々な粒子に対して影武者のように、あるいはパートナーのように「反粒子」が対応して存在します。
粒子と反粒子には、機能の差や優劣はありません。電気的な性質が反対であることだけが相違しています。なお、粒子と反粒子が出会うと、双方とも忽ち消滅してエネルギーを放出します。

(3)自然界においては、反粒子はほとんど存在しません。しかし、宇宙線が上空の空気の分子等に衝突した際に瞬間的に現われたり、粒子加速器によって粒子どうしを衝突させることによって人工的に短時間だけ反粒子を作ることができます。

(4)宇宙創成期のビッグバンの際に、素粒子と反素粒子は同数だけ大量に発生した筈と考えられています。しかし未知の理由により、反素粒子は宇宙初期に消滅してしまい、普通の素粒子や物質だけが残ったようです。


2.超対称性粒子

(1)反粒子までは素粒子の「標準モデル」に折り込まれています。反粒子とは別に、「超対称性粒子」の存在が予言されています。様々な粒子に対して影武者のように、あるいは鏡の鏡像のように、「超対称性粒子」が対応して存在し得ると考えます。粒子は固有のスピン(自転運動量)を持っています。超対称性粒子は、パートナーの粒子のスピンの量と比べて、対称的な値をとる粒子のことを指しています。

(2)超対称性粒子のひとつとして「ニュートラリーノ」と呼ばれる素粒子の存在が予言されています。ニュートラリーノは、第1章でご説明したダークマター(暗黒物質)の正体の最有力候補と言われ、世界中の科学者がその発見競争を繰り広げています。

(3)日本でも、岐阜県神岡鉱山の地下1,000mに、宇宙線の観測装置を設置してダークマターの発見に努めています。
鉱山のような地下深い場所では地表の雑音を軽減できるため宇宙線の観測に適しているからです。

(4)「超対称性粒子」に関する理論は、「超対称性理論」と呼ばれています。標準理論の欠点を克服する可能性があるため近年脚光を浴びています。超対称性理論は、重力も含めた全ての力を統一する究極の理論になる可能性があると期待されています。


<補足> 粒子加速器 

(1)量子論は、理論と実験を車の両輪として発展してきました。20世紀前半ころまでは理論が主体になって進歩し、後半は実験が重要な位置づけを占めてきました。紙と鉛筆だけでもできる理論分野は、日本人物理学者の得意分野であり、前述のとおり湯川秀樹博士を筆頭にして多くのノーベル賞受賞者などが中心となって大活躍してきました。

(2)実験は、宇宙線観測と粒子加速器実験に大別されます。宇宙線は強力なエネルギーを持っているため、地球上の分子や原子などに衝突すると様々な素粒子が発生します。素粒子の軌跡を解析することで新粒子を見つけてきました。ディラックの陽電子や湯川秀樹博士の中間子などの発見が代表例です。

(3)粒子加速器は、強力な電界や磁界によって、人工的に高いエネルギーを粒子に加えて光速近くまで加速した後、他の粒子に衝突させます。その際発生する様々な粒子を観測して未知の粒子を発見していきます。ヒッグス粒子が代表例です。

(4)付加するルエネルギーが大きいほど破壊力が大きくなって、より強固な粒子でも破壊することができるため、年々大型化、強力化してきています。
日本では、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構や、東海村J-PARK、兵庫県の理化学研究所などに設置されて様々な研究が続けられています。

(5)スイスのジュネーブ郊外に、今のところ世界最大の粒子加速設備が稼働しています。地下100mのトンネル内に設置された1周27kmの環状の巨大実験施設です。
略称でLHCと呼ばれており、日本の研究者や企業も深く関わっています。

(6)前述の「ヒッグス粒子」は、このLHCによって発見されました。
また、ダークマターの有力候補である「超対称性粒子」を発見すべく多くの科学者がLHCを使用して凌ぎを削っています。

(7)日米欧が構想する次世代最新型の超大型線形加速器(国際リニアコライダー)の建設計画があり、それを東北地方の北上山地に招致するかどうかが時々話題に上がっています。



by jiriki-tachikawa | 2014-07-03 00:00 | 不思議メールマガジン

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